下駄が好きだ
2020/02/16
これも新聞記事で申し訳ないが、こんな記事広告が載っていた。本人たちの企業広告ではなく、福島を応援する広告のようだ。
福島県の会津は桐の町。僕自身も何度か、桐の下駄やタンスの取材をしたことがある。特に、桐の下駄は大好きで、取材時には必ず買って帰ったものだ。
そもそも僕の下駄好きは、小学生の低学年の頃からだ。
いくら田舎の子だからといって、普段から下駄を履いて過ごすほどの時代ではない。もはやみんなズック(布のスニーカー)である。しかし僕は、どうしても下駄が欲しかった。何の影響だったかは定かではないが、当時はまだ、いじめられっ子だった僕は、いつか柔道をやって、いじめっ子に仕返しすることを誓っていた。なぜ空手でもボクシングでもなく柔道だったのかはわからない。おそらく、身近に空手道場もボクシングジムもなく、柔道なら高校に部活があると聞いたからではないだろうか。
とにかく、柔道の本を買い見よう見まねで技を覚えたりしていた。そんな時に見たのが、テレビドラマ『姿三四郎』だった。そこではみんな下駄を履いていた。その後見た柔道一直線も下駄。何より好きだったのは、水島新司の名作野球漫画『ドカベン』。野球漫画?と思うかもしれないが、実は、『ドカベン』の初期は、柔道漫画で始まった。山田太郎も岩鬼も柔道部だったのだ。で、その主人公山田太郎も、もちろん下駄を履いていた。
そんなこんんなで下駄は憧れだったのである。
とはいえ、子供にすんなり下駄を買ってくれる親はいない。しかも普段履きにしようとしているのだから、なおさらである。
僕はサンタクロースさんにお願いした。とはいえ、そろそろ正体には勘づいていたので、親の前で、サンタさんにお願いするプレゼントは下駄だと発表していた。そして、運命のクリスマス。サンタさんは、僕の欲しかった下駄をプレゼントしてくれたのであった。クリスマスプレゼントに下駄をもらって喜ぶ馬鹿息子を親はどんな目で見ていたのだろうか。
高校になると、ひょんなことから応援団長をやることになり、しかも、担任の先生から「ウチは進学校のせいで、ここのところ、団長はみんなナメられてきた。多少の格好は目をつぶるから、他校にナメられないように行動しろ……などと粋なことを言ってくれていた。調子に乗って僕は、長ランはもちろん、学生帽をぐだぐだにしてかぶり、足は下駄で通った。しかも、しばらくすると、普通の下駄から、高下駄(田舎では足駄と呼んだ)にアップグレードさせた。僕は学校からすぐに下宿から通っていたから、他校の生徒たちと毎日顔を合わせることはなかったが、週に一回、実家に帰るとき、バスと電車を乗り継いで最寄り駅まで行くのが憂鬱だった。何せ目立つ格好である。その最寄り駅には、わりと怖い高校もある。しかし、先生の言葉を胸に刻んだ桂少年は、飛んでくるガンつけを無視しながら、内心ビクビクで帰ったものである。
話がそれたが、とにかく、子供の頃からの下駄好きである。今も近所履きのつっかけようと、浴衣用、着物用と持っている。本当は、洋服にも下駄を合わせて過ごしたいのだが、家族の反対もあって(近所の目というやつだ)、こっそりしかやっていない。
この記事にもあるが、若者がもっと気軽にオシャレに下駄を履くようになれば、僕も気兼ねなく履けるのだが……。それは着物にもいえること。若い人たち、何とかお願いします。
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