医者のスネに味噌をつける
2017/01/31
我が故郷、秋田県東成瀬村には、『豆腐あぶり』という冬の風習がある。基本的には各家庭でやる行事だったらしいが、今では家庭内ではけっこう廃れてしまったため、伝統文化を伝えようと、お年寄りが子供たちを集めて教えているようだ。
写真は、村の小学生が伝統行事の体験学習で「豆腐あぶり」を体験した時のもの(子供達の顔はトリミングしました。出典は東成瀬村の公式ホームページ http://www2.higashinaruse.com/top.php)。
この『豆腐あぶり』、毎年12月8日に行われていた。理由は、その日が、一年間たまったお薬の金を、医者に支払う日だったからだとか。ちなみにこの日は“薬礼日(やくれいび)”と言われていた。
いずれにしろ、貧乏な家には結構大変な日だったわけで、「来年こそは医者にかからないようにしよう」と決意する日でもあったわけだ。
それと豆腐と何の関係が?
確かにそうである。そこでここに一つのことわざが出てくる。それがタイトルの『医者のスネに味噌をつける』である。 「医者のスネに味噌をつける」という意味で、医者のスネを豆腐にみたて、それにあぶって味噌をつけたいわゆる“豆腐田楽”を食べるのが風習だったのだという。
ここまで聞いても「???」である。
父に聞いてみた。もちろん知っていたが、なぜ医者のスネに味噌をつけると医者いらずとなるのかの説明はつかなかった。二人で思案した結果、「味噌をつけるってのは、失敗したりして評判をおとすとか、順調にいかなくなるとか、台無しになるとかの意味の、“ミソがつく”から来てるんじゃないか」ということになった。
つまり、医者が商売にならないようにしようってことじゃないかと。医者をあがったりにするには、病気をしないことだ。医者にミソをつけられるよう、豆腐を医者のスネにみたてて、味噌をつけて食べたのではないかという考えである。
もちろん推測である。なので、誰か知っている方は、ぜひお教え頂きたい。お待ちしております。
ちなみに、失敗を「ミソをつける」というのは、昔から味噌は火傷に効くとされたところからきているとか。火傷をするというのは、うっかりしていたからで、その火傷に味噌を塗っている人は、失敗した人ということになる。そこから来ているとか。 もっと単純な説として、器に味噌がついていると、見た目がよくないところからきたという人もいるようだ。いずれも一つの説であるが。
関連記事
-
-
30年前のアメリカ紀行備忘録17
サンアントニオ到着。この町は感激した。とにかくにぎやかで華やかで楽しい。アメリ …
-
-
日詩 1月1日〜10日(2018)
日詩(ツイッター詩)のまとめです。 例えば1月1日は… 元日の朝のこの静けさ こ …
-
-
初めての南松本
旅行ライターだった時期があるので、松本は何度も行ったことがある。しかし、この南 …
-
-
浅田次郎『獅子吼』
この冬休みに読みました。大好きな浅田節満載です。やっぱり浅田さんは短編が面白いか …
-
-
駅伝、せっかくの感動に水指す“批評家気取り”(1月3日)
1月3日 駅伝の往路。予想外の創価大。おめでとうだったよね。注目されてた青学は残 …
-
-
根津甚八さんとの想い出
俳優の松方弘樹さんが1月21日に74歳で亡くなったというニュースが飛び交った。松 …
-
-
『窓から逃げた100歳老人』『世界を救う100歳老人』
先日の『天声人語』である。 ヨナス・ヨナソンさんが著した小説『窓から逃げた1 …
-
-
おせちは大晦日がいい
東京で初めての年末年始を迎えた時、僕の田舎とは随分違うものだと感慨深かった思い …
-
-
映画『母 小林多喜二の母の物語』に思う
映画『母 小林多喜二の母の物語』の有料試写会が、明日横浜で開催されるという。上 …
-
-
『日詩』2月21日〜29日分アップしました。
ツイッターにあげている『日詩』。2ヶ月終わりました。最近楽しくなってきました。1 …
- PREV
- 工作に使う“糊”に似てるから『のり餅』なのか?
- NEXT
- 『日詩』のまとめ 1月1日〜10日
Comment
大曲は、12月8日は、「病い焼き」と言って、餅粉か、小麦粉で、焼いた「おやき」を食べます。「あんこ」が沢山挟んであって、とてもおいしい。 数個は川に流します。これで、風邪を引かないおまじない。
昔から、医者代をお金がないので、この日まで待ってもらって野菜などをさしあげて許して頂いた、と。
小松様
「病い焼き」は知りませんでした。おいしそうですね。地域によっていろいろあったんですね。いずれにせよ、健康でいることを願った昔の人の知恵ですね。