桂乃徒然

文筆業 佐々木桂 公式ウェブサイト

*

アニキだった戸井十月さん三回忌に初監督映画「風の国」

      2015/07/31

toijyugatsu

7月28日。戸井十月さんの三回忌。僕にバイクを教えてくれて、飲みに連れてってはいろいろ人生を教えてくれて(さりげなくね)、砂漠のオフロードレース「バハ1000」にも連れてってくれた。公私ともに兄貴的な人だった。葬式では泣いた。恥ずかしげもなく人前で泣いた。それ以前に、訃報を聞いた夜、嫁が驚くほど布団をかぶって泣いた。戸井さんがいなくなった悲しみが、戸井さんと過ごした日々が無くなったように感じて泣いた。想い出としてはもちろん残っているんだけど、その想い出を一緒に話す戸井さんがいなくなってしまったから。

そんな戸井さんの三周忌に、偶然にも「東京国立近代美術館フィルムセンター」で、戸井さんが初監督した映画「風の国」が上映されるという知らせが届いた。もちろん行くでしょ。

戸井さんの大好きな、バイク、自然、旅、そんな要素がいっぱい詰まった映画なんだけど、当時の僕はそんなに感動しなかった。生身の戸井さんの方が感動する話が多かったから。

でも、今回観たらすごいエンターテインメントだったことにあらためて感動した。映画好きの人はどういうかわからないけど、僕はホント楽しかった。もちろん後ろの常に戸井さんのメッセージを感じていたからだろうけど。

で、作品は1990年制作(公開が1991年)。25年前。だから、監督の戸井さん、植木等さん、桑名正博さん、安岡力也さん、ポール牧さん、みんな死んじゃった。当時28歳の僕にとってはバリバリの憧れの人たちだったのに。

大好きな岩城滉一さんも出ている。岩城さんはこの作品の2年ほど前にインタビューを申し込み、大好きだったためドキドキもので臨んだが、やっぱり素敵で、その後も何度か取材をお願いした。この当時は39歳。

陣内孝則さんは当時一度だけ取材したたぶんこの映画の後かも知れない。サービス精神旺盛なアニキ肌の人だった。この映画の時は32歳。

この映画の主人公・三浦友和さんはインタビューこそしたことはないが、なにせ百恵ちゃんの旦那さんである。当時の百恵ファンは友和さんは別格。百恵ちゃんが結婚するなら友和さんしかないと言っていたもの(笑)。この映画を撮っていた時、戸井さんが話してくれたエピソードがある。「友和さんがさ、差し入れで手作りのカレーを作ってくれたのよ。皆息をのんだね。(うわぁ、百恵ちゃんのカレーだ!)ってね。皆ニヤニヤしながら食って『奥さんによろしく言っといてよ』ぐらいなことを言ったら、友和さん「あ、これ、オレが作ったんです」だって。先に言えよって」戸井さん笑って話してくれた。そんな三浦友和さん、当時38歳。

まだまだ出てくる。

仲野茂。通称シゲル。もはや知らない人の方が多いと思うけど、伝説のパンクバンド「アナーキー」のリーダーだ。僕は当時でも、正直アナーキーは名前ぐらいしか知らなかった。やはり戸井さんがらみで紹介されて、バイクをやるということで草レース仲間になった。何度かコンビでレースにも出た。そんなシゲルも今や55歳。映画の当時は30歳だ。

宇梶剛士さんとは面識はない。シゲルが「宇梶はいい、宇梶はいい、今度紹介するから」と飲むたびに言ってたけど、今に至っても実現していない(笑)。でも、「さすがに元ブラックエンペラー総長、バイクの腕は良かった」と戸井さんが言ってたのを思い出す。宇梶さん、当時28歳。

びっくりしたのは、ちょい役(陣内さんの部下役)に、椎名桔平さんが出ていたこと。クレジットにも出てなかったので、僕の見間違いかと思ったのだが、調べたら、椎名さんは29歳ぐらいまで本名の岩城正剛で役者をやりながらアルバイトの日々だったとか。確かに今回の上映の最後、クレジットに岩城正剛の名前があった。「岩城滉一さんと同じ岩城だ」と思ったのと、友人に「正剛」という名前の奴がいるので「へぇ、珍しい」と思って記憶していたからだ。後で調べて、それが椎名さんだとは…、驚きだった。ちなみに当時の椎名さんは26歳。

こんな人たちの、若い頃のパワーを観ただけでも大興奮だったけど、アクションシーンも今ではできなくなった派手なものばかり。今は規制なのか、お金がないのか、車やバイクやトラックが爆発するなんて、1回か2回がいいところだけど、この映画、アクション映画じゃないのに、これでもかっていうぐらい爆発する(笑)。そして、圧巻はバイクのアクション。これがすごい。スタントにバハやパリダカなどに出ている戸井さんの知り合いが数多く出ているせいで、山道や岩肌を縦横無尽にバイクで駆け回るシーンは、オフローダーとしては、それだけで大満足。

当時はそれほど感動しなかったのに(戸井さんゴメン)、今観るとすげぇーって思う。たぶんだけど、当時の僕は自分もバイクに乗っていたから、あそこまで上手くはないけれど、そこそこ走れるという自信があったから、そのシーンの素晴らしさには目が行かなかったのだろう。もちろん今はとんでもないが(笑)。それでも、またバイクにまたがって旅をしよう…そう思わせられた映画だった。もしかしたら、へこたれている僕に、戸井さんが喝を入れるために観せてくれたのかもしれない。

ちなみに、9月3日木曜日、19時にも上映します。場所は同じく「東京国立近代美術館フィルムセンター」

お時間ある方は、ぜひ見に来て下さい。

 - 日々の徒然

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

日々の徒然
30年前のアメリカ紀行備忘録22

 気を取り直して喋っていると、友だちがやってきた。男一人(TONY)と女一人(ち …

あちらの娘はがっつりし過ぎ ?

貧しく不幸な娘がいました しかし今の生活に不満も言わず 健気に暮らしていました …

念願の“石けん箱

 念願の“石けん箱”が届いた。  リッチェル石けん箱 角「ハユール」。  なんで …

年取ったら部屋を貸してくれないんだと

朝日新聞に、こんな記事があった。 年寄りには部屋を貸さない大家が多いんだとか。 …

『日詩』のまとめ4月21日〜30日分アップしました

日誌ならぬ『日詩』続けております。 よろしければ 『詩郷 うたざと』にて htt …

『お母さん』ではダメなの?

ちょっと前にこんな新聞の記事があった。 うーんと考え込んでしまったので、やっと今 …

日詩 11月11日〜20日(2018)

日詩のまとめです。 日詩(ツイッター詩) 11月21日〜30日 こんな詩も… 空 …

トラック野郎は楽しい

 毎日書く日記のような詩“日詩”を提案してから5年。その中にも何度か登場するのが …

2021年1月1日“たこ焼き”の元祖は、根っこに会津が…

2021年1月1日 あけましておめでとうございます。一昨年、昨年と挫折したブログ …

日々の徒然
奇妙な夢を見た

誰かは思い出せないのだが 相当親しい人が死んだようだ。 その葬式の前に、数人の友 …