桂乃徒然

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おせちは大晦日がいい

      2020/01/07

 東京で初めての年末年始を迎えた時、僕の田舎とは随分違うものだと感慨深かった思い出がある。基本的におせちを含めた豪華な料理は、正月に食べるものらしく(宴会もお正月のようで)、大晦日はいつものお料理と年越し蕎麦だけという習わし。ぼくの故郷(秋田県の東成瀬村)では、大晦日こそ、豪華料理に大宴会なので、東京の年末を少し寂しく思ったりした。田舎での年越し蕎麦は、大宴会のあとのシメであって、大晦日のメインではない。特にウチの場合は、紅白歌合戦を観ながら宴会をして、終わった頃にお蕎麦をすすり「あけましておめでとう」となる。そしてその後、ほろ酔い気分で近所の神社にお参りするのである(ちなみに外は雪)。
 この違いはなぜなのだろうと、ちょっと調べてみた。
 通常おせちはお正月から食べ始め、3日まで食べつなぐ。これは1年間ずっと忙しく休む暇のないお母さんをはじめとした女性陣に、正月三が日ぐらいはゆっくりしてもらおうということから来ている。これは皆さんもご存知の通説で、これに関してはウチの田舎も同様だ。問題は大晦日から食べ始めるのか、元旦から食べ始めるのかという点。調べているうちに、昔は大晦日から食べていたという説にぶちあたった。
 もともとは、大晦日の夜、家に神様をお迎えして、お料理をお供えし、同時に家族皆も神様と一緒にお料理を食べ、無病息災を願うという習わしがあって、それが東北あたりでまだ残っているのだろうというのだ。確かにウチではおせちにそれほどこだわらない。ごちそうがあればいいのである。ちなみに、おせちなどのごちそうを食べる時、両端が細く真ん中が太くなっている箸を使う家もあるかと思うが、あのお祝いの時によく出てくるお箸は、一方は自分が食べ、もう一方の端で神様に食べて頂く。つまり神様とご一緒にごちそうを頂くという意味があるのだとか。これは知らなかった。また正月は火を使うなと昔おばあちゃんに言われた記憶があるが、その理由は、正月の火は神様の火であることから、人間は扱ってはいけないという、神様への敬意から来ているらしい。そのへんのこともあって、火を使わないおせち料理につながるのかもしれない。
 ということで、ウチの田舎の風習である大晦日の宴会も、間違ってはいなかったようだ。
 どちらにしろ、僕はやっぱり、大晦日の宴会がいい。何が待ち受けているかわからない新しい一年に対して「さあ頑張るぞ!」の意を込めた宴会も良いのかも知れないが、いろんなことがあったけど皆無事で一年を過ごすことができたという「お疲れさまでした」の宴会の方が僕にはしっくりくるのである。
 一年の最後に、家族皆の一年を振り返りつつ、神様と一緒にドンチャン騒ぎ。僕はこっちが好きだなぁ(笑)。

 - 2020年, 日々の徒然

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