桂乃徒然

文筆業 佐々木桂 公式ウェブサイト

*

久しぶりに大野木の墓参り

      2020/02/04

 朝、こんな日詩を書いた。
 
   数日前奴の夢を見た
   おい、たまには思い出してくれよ
   なのか
   おい、もうそろそろ忘れてくれよ
   なのか
   今日は奴の昔の誕生日
   もう歳は数えない
   しかし
   僕のどこかにまだ奴はいる

 そしたら、たまたまその日の仕事が目黒で終わった。朝家を出たときと予定が少し変わって、移動しなければならなかったのだ。帰ろうと目黒駅まで行って、ん?っと気づいた。確かここは大野木が眠っているお寺が近いんじゃなかったか?ネットで調べてみる。
 大野木が亡くなってはじめての墓参りも、皆との集合に遅れ、まあいっか…と、飲んだくれてから行ったため、お寺の名前もあやふやだったが、とにかく駅から近かったような気がするとの思いから、調べた中で駅に最も近い『高福院』に向かった。

予想はドンピシャ(まあ、予想とは言わないか。ただ場所を忘れていただけだから…)。このお寺だった。正式には『高野山真言宗高福院』である。
 ただ、ここは地べたにお墓があるわけではない。納骨堂が設けられていて、普段はそこに収められている。お参りをしたい時には、事前に予約をして、その時間に訪れるようにするのだと、前回は言われた。僕は遅刻していったため、みんなと一緒にお参りできず、みんなが「もう少ししたらあとで一人来ます」とお寺の人に伝言してくれたため、なんとかお参りできたらしかった。後でみんなと合流したら「今回は特例なんだぞ」とられた。まあ、いつものこと(笑)。
 このように、前回は特例だったのだが、今回も、いきなり目黒駅で思いついたのだから、予約などしているわけがない。ダメだったら納骨堂の外で手を合わせて帰ろうと(大野木ゴメン、いいかげんで)、とりあえず納骨堂の管理受付に顔を出した。
「あのぉ、お参りしたいんですけど、予約しなくちゃ無理ですよね」
(ダメだろうなぁ、おじさん無表情だし…)
「お名前わかりますか」
(お、いけるのか?でも、大野木の名前じゃないよな。誰の名前で登録してるんだっけな、長女?次女?どっちだっけ。とりあえず言ってみよう)
「大野木です。大きい野原の木と書いて大野木です」
(つい口から出てしまったが、これは生前ヤツが自分の名前を電話で相手に伝えるときの常套句だった。懐かしい)
「大野木さん、下の名前は?」
(やっぱり…、故人じゃないよな、たぶんどっちかの娘だが…)
 なんて考えていたら
「ありましたね、大野木さん。珍しい苗字ですから一人しかいらっしゃいません。大野木俊秋さんですね。○○○さんで登録されています」
「あ、それ長女です」
「了解致しました。では、少々お待ち下さい。これから準備致しますので」
「え?大丈夫なんですか?今からでも」
「ええ、他の予約も入っておりませんので」
 これはヤツのお導きか。とにかくヤツには会えるらしい。
 小さな礼拝堂のような場所に、お骨と写真が運ばれ、ロウソクに灯りが灯る。

「ではごゆっくり」
 おじさんが消えた。
 二人っきりになったんで、とりあえずポケットから缶ビールを出して供え、お焼香をしていろいろ話してみた。たわいもない話。
「そっちはどうだ?」
「ショーケンのライブには行った?」
なんて話してるウチに、
「なんでもうちょっとこっちに居てくれなかったんだよ」
「おまえがいなくてオレ結構大変だぜ」
「おまえが居たら、まだまだ一緒に仕事できたのに…」
なんてことを話し始め出して、やっぱり涙が出て来てしまった。自分でも笑うぐらいオイオイ泣いてしまった(笑)。
 供えたビールを開けて、二人で飲みながら、大野木の大好きだったショーケンのYouTubeを掛けた。
 ヤツがよくカラオケで歌っていた『大阪で生まれた女』と『酒と泪と男と女』。
 大野木の歌ってる姿を思い出しながら、ビールを飲んでたら、なんだか楽しくなってきた。
「いいね、いいね〜」
 笑いながら一緒に歌った。
 それを知ってか知らずか、受付のオジサンは、二階に上がって行ってくれたようだ。気を使ってくれたのか。
 二人で一本飲みきったところで、「またな」と挨拶して、僕の墓参りが終わった。偶然だったのに、意外にも充実した時を過ごすことができた。やっぱりヤツのお導きだったのかなぁ。

 - 2020年, 日々の徒然

Comment

  1. はる より:

    素敵な心暖まるお話をありがとうございます…わたしも大野木さんに会えた気がしました…好きな歌を聴きながら桂さんと飲んで語れてニコニコのお誕生日ですね…
    桂さんもどうぞご自愛くださいませ…

    • sasakikatsura.com より:

      はるさん

      お読み頂きありがとうございます。
      久しぶりに大野木と歌いました(笑)。
      僕は今のところ身体は大丈夫です。大野木にも「まだ俺を呼ぶなよ」って言っておきました(笑)。大野木も「間に合ってるよ」って笑ってたと思います。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

日詩 4月21日〜30日(2018)

日詩のまとめです。 日詩(ツイッター詩まとめ) 4月21日〜30日 例えばこんな …

トラック野郎は楽しい

 毎日書く日記のような詩“日詩”を提案してから5年。その中にも何度か登場するのが …

百人一首

 飲んでばかりで正月らしい遊びをしていないと、家族からのクレームが入ったので、し …

『日詩』4月1日〜10日アップ

早いものでもう4月。 4月の初めは、新しい出会いの季節。 素敵な仲間と出会うこと …

『日詩』のまとめ5月21日〜31日分アップしました

日誌ならぬ『日詩』 ついに5ヶ月間が終わりました。 ブログ『詩郷うたざと』にアッ …

宇崎竜童 70thバースデーライブ アンソロジー2016取材雑記

 宇崎さんの70歳の誕生日ライブ。行って来ました。もう一ヶ月近く前なのですが、そ …

あちらの娘はがっつりし過ぎ ?

貧しく不幸な娘がいました しかし今の生活に不満も言わず 健気に暮らしていました …

『日詩』9月1日〜10日おまとめ

夏が終わったような終わらないような 秋が始まったような始まらないような そんな9 …

no image
30年前のアメリカ紀行備忘録14

8月16日  ストックヤードの町で少し買い物。その買ったものをお店の人に持っても …

日々の徒然
3月4日さきがけ新聞寄稿で書けなかった「僕の緊張」について

秋田の「さきがけ新聞」から、秋田県の公立高校を受験する中学生にエールを送る原稿を …