『いだてん』たけしの志ん生、実は似てるんじゃない?
2020/02/14
正月明けに、ビートたけし、北野武の話を紅白歌合戦にからめて書いたが、ここでもう一つ。昨年終わった NHKの大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺』についてだ。
そもそもこの大河ドラマは、史上最低の視聴率と言われるぐらいの評価だったらしいが、僕は大好きだった。
最低の視聴率といえば、夏菜主演の朝ドラ『純と愛』もワースト10位の低視聴率だったが、僕は大好きだった。朝ドラファンに受け入れがたい要素ばかりで…という批評が多かったようだが、僕は録画して観ていたので厳密には朝ドラではなかった。
『いだてん』もしかり。「大河ファンに受け入れがたかった」のが低視聴率の原因らしいが、これも録画してじっくり観たので、日曜の20時に観る大河ドラマファンとは違うかもしれない。この批判された大河ドラマ『いだてん』、中でも「たけしの志ん生がヒドイ」という意見が多かった。志ん生とは、五代目古今亭志ん生のことだ。大河ファンには落語ファンが多いのか、こぞって「志ん生はあんなんじゃない」と言う。また、たけしの滑舌の悪さも(九死に一生を得るほどの事故に遭ったのだからしょうがないと思うのだが)、志ん生はあんなんじゃないという意見も多かった。いずれにせよ「志ん生はあんなんじゃない」なのである。それだけ、五代目古今亭志ん生の人気がいまだ衰えていない証拠でもあろう。
そもそも『天衣無縫とも言われた芸風で愛された落語家』なのであるから、あんなんじゃないもこんなんじゃないもないだろう。きっと志ん生に言ったら鼻で笑われそうだ。
で、ビートたけし、北野武がらみで言うと、僕の単行本デビュー作『監督たけし』が、『その男凶暴につき』の制作過程を綴ったノンフィクションだというのは、前にも書いたと思うが、その中に、「たけしさん演じる主人公が、車で現場へ向かうシーンで、ラジオから落語が流れているのだが、これが志ん生の『黄金餅』で、たけしさんは志ん生が大好きなのだ」というようなことを書いている。
その時の取材でも、志ん生が好きだという話は再三聞いていたので、今回の『いだてん』で、志ん生役をやることになって大喜びしているだろうことは想像がつく。それだけ大好きな志ん生を、視聴者に非難されるような理由で演じるわけがない。たけしさんには、たけしさんなりの志ん生像があって、それを考え抜いての今回の志ん生だったのではないかと思う。
そして何より注目したいのは、そのラジオから流れる志ん生さんの『黄金餅』であるが、まだ志ん生も黄金餅も知らなかった、若かった頃の僕にとっては、この本物の志ん生さんですら、滑舌が悪くて何を喋っているのか聞き取りにくいものだった。しかも、志ん生さんは晩年、脳出血を患っている。たけしさんの滑舌の悪さは、逆に、そんな志ん生さんとリンクするものがあるようにも思う。
まあ、そもそもこんな面倒臭い説明なんていらないよな。ただただ『いだてん』はドラマとして面白かった。大河としては知らないが…。
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