桂乃徒然

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護美箱(ごみばこ)と書きたい

      2017/02/03

秋田の新聞『秋田魁新報』に連載中の『遠い風近い風』というエッセイに、昔、こんなものを書いた。前半は割愛するが、後半のゴミ箱の下りが、今でもそうあってほしいと願っている。
で、以下、転載。

東京の街にはゴミ箱がないことに気づく。結局、家に帰るまで、バッグの中に空いたペットボトルが入ったままとなる。
 ゴミは家に持ち帰りましょうという昨今の風潮からすると、決して悪いことではないのだが、やはり不便である。地下鉄サリン事件のせいで、テロ対策のため、地下鉄のゴミ箱がすべて撤去され、それにともなって地上の駅からもゴミ箱が消えた。その後、街のゴミ箱もなくなっていった。今、駅のホームには少しずつ戻ってきてはいるものの、いまだ街には少ない。
 小学生の低学年の頃、村の電柱にゴミ箱を取り付けるという課外実習(?)をさせられたことがある。ゴミ箱を増やしてポイ捨てをなくそうということだったと思う。業務用の大きな缶詰の空き缶や、四角いブリキの一斗缶などに、ゴミ箱と書いて、針金で電柱にくくりつけていくのだが、この時、幼い僕らはひらがなで「ごみばこ」と書き、高学年の先輩たちは「ゴミ箱」なんて書いていた。
 そんな中に、僕には読めない言葉があった、おそらく中学生のお兄さん、お姉さんが書いたのだろう。そこには「護美箱」とあった。とてもきれいな字で書かれていたこともあって、子供心にゴミを捨てるのがもったいないなと思った記憶がある。その字が「ごみばこ」と読むのだというのは聞いてわかったが、なぜそんな漢字なのかはずいぶん後に知った。小さかった僕はまだ「護」を「まもる」と読めなかったのだ。ゴミ箱は「美しさをまもる箱」、だから「護美箱」だったのだ。誰が考えたか知らないが、「ゴミ箱」や「ダストボックス」などと書かれてあるものより、数段粋であるし日本語としても美しい。これなら、ゴミ箱は汚いものだというイメージが払拭される。むしろ大切なものだという印象になる。実にうまいネーミングである。

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